自作パソコンって
電源ユニット選びが重要って知ってた?
パソコンを選ぶときについ見落としがちなのが電源ユニットです。
パソコンを買うときにCPUやメモリ、グラフィックカードといった主要なパーツは誰でもチェックすると思いますが、電源ユニットまでチェックする方はかなりパソコンに詳しい方だと思います。
BTOパソコンでスペックの高いパソコンを選ぶときには、電源ユニットまでしっかりチェックするのをおススメします。
ここでは、これから自作パソコンに挑戦する方や性能の良いパソコンを購入しようと検討している方向けに、パソコンの電源ユニットの選び方とおススメの電源を5種類紹介します。
2018年からBTOパソコンを使った動画編集の検証を実施し、これまで年間20台以上 累計100台以上のパソコンレビュー記事を執筆しました。PC通販サイトとコラボで動画編集用のパソコンの企画・販売や当サイト限定クーポンの配布を行っています
この動画では自作パソコンを組みたい動画編集者の方向けにパーツ選びについて詳しく解説しました。
組み立て方については「自作パソコンの組み立ての流れを動画編集者さん向けに解説」で解説したので合わせてご視聴ください。
自作パソコンにおいて、電源ユニット選びはとても重要です。
その理由は、パソコンの故障に関する影響がとても大きいから、という点に他なりません。
実は電源ユニットは故障する頻度が高いパーツであるだけでなく、発生したトラブルが電源ユニットのみにとどまらないことが多いのも特徴です。
パソコンの心臓部ともいえる電源ユニットは、他のパーツも巻き込んで壊れてしまう可能性が高く、全体的な損害が大きくなりやすいのです。
そもそもパソコンが安定した動作をするかどうかを左右する重要なパーツでもあるため、コストパフォーマンスがいいから、安価だからというだけで選ぶこともおすすめできません。
故障まではいかずとも、期待した動作ができない、目的としていた作業に使うソフトが上手く動かない…といった事態につながることもあります。
自作パソコンを組み立てようと考える方の多くは、それぞれのパーツにこだわりを持って選んでいることかと思います。
特に高度な処理が必要になるような作業をするためのパソコンであれば、パソコンに大きな負担のかかる過酷な使い方をすることを前提としてパーツを選らばなければいけません。
そうなれば、自然と各パーツも性能のいいハイエンドモデルを選ぶことが増えますよね。
こだわった結果、総額で数十万円ほどの費用がかかることもよくある自作パソコンが、安価な電源ユニットを使ったことで故障してしまったらやりきれません。
そういった事態を防ぐためにも、電源ユニットについては適当な選び方はできないのです。
電源ユニットの規格は、主に3種類に分かれています。
ATX電源、EPS電源、SFX電源の3つです。
電源ユニットの規格はPCケースの大きさも考慮して選ぶことになります。
ケースは大型のものが「フルタワー」、中型のものが「ミドルタワー」、小型のものが「ミニタワー」「スリム」「キューブ型」に分かれています。
大きなケースは消費電力量の大きい大型のグラフィックカードを搭載できますし、HDDを3~4個とたくさん搭載することが可能なので、拡張性を考えてワット数が大めの電源ユニットを選ぶ必要があります。
いちばんメジャーなのがATX電源で、フルタワーからミニタワーまで、多くのPCケースに対応している電源ユニットです。
製品数も多く、価格を重視したコストパフォーマンスのいいモデル、大容量のモデル、静音性重視のモデルなど、幅広い選択肢の中から選ぶことができます。
EPS電源は、サーバーやワークステーションなど、高度な処理を行うときにおすすめの電源ユニットです。
サイズはATX電源と同じか少し大きい程度で同じように使用できるのですが、一部端子の形状が異なるので注意が必要です。
SFX電源は小型のPCケースに使われているコンパクトな電源ユニットで、Micro ATX電源とも呼ばれることもあります。
用途が小型のPCケースを使うときのみに限られているためか、ATX電源やEPS電源と比べると製品数は全体的に少なく、選択肢の幅は狭めです。
ぱっと見た感じATX電源と同じように見えるので、通販でパーツを揃える場合は間違えて購入しないよう注意しなければなりません。
主な用途としては、小型ケースに付属している電源ユニットの容量や動作などに不安を感じるときに別途購入して交換する、というものが一般的です。
電源ユニットのW(ワット)数は、自作パソコンにどれくらいのスペックを求めるかに合わせて選びます。
電源容量として製品に記載されている数字は総合出力(定格出力)を表わしています。
スペックを求めるほどに高出力のものが必要となり、本格的なゲーミングパソコンでは500W程度がおおよその目安となっています。
ライトゲーマー向けゲーミングPC | 500W |
ミドルゲーマー向けゲーミングPC | 700W |
ヘビーゲーマー向けゲーミングPC | 800W~1200W |
動画編集・CG制作向けPC | 700~800W |
注意したいのは、W数が大きければそれでいいというわけではないことです。
大は小を兼ねるということわざがありますが、電源ユニットのW数に関してはそれが当てはまりません。
電源ユニットは、ACからDC電源に変換する機能を持つパーツです。
変換効率がいちばん高いのは、負荷率が50%になるときです。
負荷率がもっと低い場合にも高い場合にも、どちらにせよ変換効率は下がってしまいます。
変換効率をよくすることを考えると、電源ユニットのW数はただ大きければいいというわけではないとわかります。
もちろんW数が低すぎれば電源が落ちたり、パソコンが故障したりといったトラブルの原因となるので、無理に電源容量の小さいものを選ぶのは避けるべきです。
ですが電源容量が大きいものについても、変換効率の悪さから電力が無駄にかかったり、発熱が余計に高くなったりといったデメリットがあります。
ちょうどいい電源容量の電源ユニットを選ぶ目安としては、高い負荷がかかった状態でも総合出力の70%程度になるもの、と覚えておきましょう。
いちばんの理想はもっとも効率がよくなる50%ですが、当然ながら電源容量が大きいとそれだけ価格も上がり、コストがかかります。
効率とコストパフォーマンスのバランスを考えると、60%から70%を意識して選ぶのがベター。
高い負荷のかかる作業を長時間、頻繁に行う場合には50%前後になるものがおすすめです。
高負荷環境をつくって試してみる方法としては、高度な描画の3Dゲームを使ってその瞬間の消費電力を計測してみる、というやり方が手っ取り早いでしょう。
より正確な方法は消費電力を測るワットチェッカーを用意して計測するのが良いです。
また、手軽に消費電力を確認するには「Joulemeter」というソフトが便利です。
Joulemeterは、マイクロソフトが開発したソフトウェアで、パソコンにインストールすることで消費電力を調べることできます。
たとえば、3Dゲームをプレイしてパソコンに高負荷を与えたときの消費電力が330Wだったとします。
総合出力の70%が330Wになる数値として計算すると、理想的な電源ユニットは総出力471Wのものとなります。
あとはこの数字が当てはまる範囲の製品を選べばオーケーです。
電源ユニットの電気変換効率は負荷率が最大出力の50%になるときがいちばんよくなります。
電気変換効率がいいとどんなメリットがあるのかというと、効率がいい分余計な電力消費を抑えられるので、省エネになるという点です。
たとえば、600Wの電源ユニットを使っているときにシステム要求も600Wになるとするとします。
その場合、STANDARDと呼ばれるランクの低いモデルでは120W、もっともランクの高いTITANIUMモデルでも60Wの電力ロスが発生します。
この電力のロスをできるだけ減らすためには、電気変換効率が高くなるよう使用時の負荷率を50%に近づける必要があるのです。
また、電源ユニットの最大出力に余裕をもたせることで、電源ユニットの劣化防止にもつながります。
最大出力が600Wだからと常にフルパワーで余裕なく使っていると、電源ユニットにかかる負荷はそれだけ大きくなります。
発する熱も高くなるため、部品の劣化が早まるというデメリットもあります。
常に全力疾走させるのではなく、ある程度余力を残した状態で使用できるような電源ユニットを選ぶことで、劣化をできるだけ送らせて長く使えるようになります。
また、将来的にパソコンをより拡張するときのことを考えると、やはり電源ユニットのW数には余裕をもっておくのがベターです。
自作パソコンを長く使っていくためには、そのときどきで用途や求められるスペックに合わせて各種パーツや部品を変更していく必要が出てきます。
特にHDDやSSD、メモリは増設したくなる機会が多いパーツですよね。
新たにパーツを追加するため、その分消費電力も大きくなります。
ビデオカードを交換したり、2枚差してSLI構成にしたりと、こちらも変更とともに消費電力がぐっと増える拡張です。
システム容量が電源容量を上回ってしまえば当然電源ユニットをより大きな電源容量の製品に取り替えなければいけません。
一方、はじめから電源容量に余裕をもたせていれば、多少拡張してもまだ余裕をもって元の電源ユニットを使い続けることができます。
これらの要因をふまえて、電源ユニットのW数を選ぶときの目安は「システム全体の最大消費電力の2倍」と覚えておきましょう。
パーツ一つ一つの必要となる電力量を調べるのは面倒ですが、そんな時はパソコンショップが公開している電源容量計算ツールがとても役に立ちます。
関連情報:電源容量計算 システム構成選択|ドスパラ
CPUやメモリ、HDDなど各種パーツの商品名や個数を入力すると必要なシステム容量がどのくらいかチェックすることができます。
現在広く浸透している電源ユニットの規格として、80PLUSというものがあります。
現在は80PLUS規格を満たしていない電源ユニットを見つける方が難しいといわれるほど広く普及している規格です。
80PLUSは電力変換効率の性能を示している規格で、性能が低いものから順に、STANDARD・BRONZE・SILVER・GOLD・PLATINUM・TITANIUMの6段階に分かれています。
それぞれの電力変換効率を比べてみましょう。
STANDARD | BRONZE | SILVER | GOLD | PLATINUM | TITANIUM | |
負荷率20%時 | 80% | 82% | 85% | 87% | 90% | 92% |
負荷率50%時 | 80% | 85% | 88% | 90% | 92% | 94% |
負荷率100%時 | 80% | 82% | 85% | 87% | 89% | 90% |
性能がいちばん低いSTANDARDでも80%以上の電気変換効率を満たしているのがわかります。
この電気変換効率の高さのおかげで、80PLUS規格を満たしている電源ユニットは、規格を満たしていない電源ユニットと比較するとさまざまなメリットがあります。
まず電気変換効率の高さによる発熱量の減少とそれに伴う各パーツへの負荷の減少、静音化、そして無駄な電力を使わないことによる省エネ化も見込めます。
こうして電気変換効率だけを見ればもっとも性能が高いTITANIUMがいちばん省エネなのですが、やはり性能が高い分価格も上がるため、コストパフォーマンスもふまえて選ばなければいけません。
そもそもTITANIUM規格の電源ユニットはハイエンドPC向けの製品であり、一般的な自作パソコンに使うことはあまりないでしょう。
逆にハイエンドモデルのパソコンを自作したい方にとってはTITANIUMがおすすめです。
実際に同じような環境・条件で比較してみると、GOLD規格とPLATINUM規格の製品にはそこまで大きな差がないことがわかります。
価格差も加味すると、よほど高負荷の作業をするのでなければGOLD規格の電源ユニットがいちばん性能と価格のバランスがいいといえるでしょう。
コストパフォーマンスは度外視で、とにかく性能がよくスペックの高い自作パソコンをつくりたい!という方にはPLATINUMやTITANIUMがおすすめですが、そういった理由がなければ電源ユニットはGOLD規格で十分です。
電源ユニットの各種ケーブルについて、現在は3種類の取り付け方があります。
すべてのケーブルが独立しておりフルモジュラー式とも呼ばれるフルプラグイン型、一部のケーブルが独立しているセミプラグイン型、すべてのケーブルが電源ユニット側に固定されている直付け型です。
ケーブルマネージメントを重視した観点から見ると、おすすめなのはプラグイン型です。
プラグイン型は、さらにフルプラグイン型とセミプラグイン型に分かれていますが、コストパフォーマンスの面ではセミプラグイン型が勝っています。
すべてのケーブルを着脱できるフルプラグイン型は主に高価な電源ユニットで採用されていて、機能の面では使いやすいですがコストはどうしてもかさんでしまいます。
一方で、安価な電源ユニットには直付け型のものが多く、使い勝手はあまりよくありません。
セミプラグイン型のケーブル仕様であれば、フルプラグイン型よりも価格を抑えつつ、プラグイン型のメリットも享受できます。
性能だけでなく予算もふまえて、どのケーブル仕様の電源ユニットを選ぶか考えてみてください。
電源ユニットを選ぶ上で、容量や80PLUS規格と並んでチェックしておきたいメーカーです。
自作パソコンをつくる場合、インターネット通販でパーツを購入する方も多いかと思います。
そこで以下では通販サイトの売れ筋ランキングをチェックし、現在人気を集めている主なメーカーをご紹介します。
BTOパソコンメーカーの製品でも採用されているのがSeasonicの電源です。
Seasonicは台湾の電源メーカーで、FOCUS SSR-FMシリーズが有名です。
ファンの回転数を制御して静音性と冷却性を高めた電源ユニットとなっており、7年間の長期交換保証などサポートも手厚いので人気です。
オウルテックは神奈川県にある国内のパソコンパーツを取り扱う会社です。
安定性や静音性、メーカーとしての信頼感の高さなど、品質の良さが高く評価されているメーカーです。
コストパフォーマンスの良さが高く評価されているメーカーです。
なるべく価格を抑えて自作パソコンを組みたい方に人気です。
その他、CorsairやANTEC、CoolerMaster、SilverStone、KEIAN、AOPEN、Cougarなどが売れ筋ランキングにランクインしている電源ユニットのメーカーです。
ここでは自作パソコンユーザーにも支持されている人気の電源ユニットを5種類紹介します。
価格面での安さが特徴の1つです。80 PLUS Silver認証を受けている電源の中で、価格的にはかなり安価な部類に入ります。
シングルレーンで安定した出力が期待できるので、コストの低い自作パソコン用電源を探している人におすすめです。
静音性にも優れているのが魅力です。
ワンランク上の電源と同じ部品と回路構成になっています。発熱を低減するだけではなくて、50%以下の負荷出力だと19dB以下にファンノイズを抑制してくれる機能が便利です。
SATAケーブルの取り回しの良さもポイントになります。
ノーマル接続のケーブルだけではなく、L型接続のタイプも2つ付属しています。3種類の向きがあるコネクタが揃っているので、用途に合わせてケーブルの選択ができるでしょう。
Antecの電源はサーマルマネージャーが便利です。
電源ユニットの温度変化によって回転数を制御する機能が搭載されています。
温度が低ければファンが回らないので、静音性という点でも優れた商品です。静かな自作パソコンの電源を探している人におすすめできます。
ErP Lot 6 2013対応なのもポイントです。
環境配慮設計に関するEUの方針によるもので、スタンバイモードに入った時には待機電力が0.5W以下になるように、自動的に調整される機能があります。
省電力という点で非常に優れた製品でしょう。
またケーブルマネジメントが楽です。
フラットタイプのセミモジュラーケーブルが採用されていて、初めての人でも配線しやすくなっています。
必要なケーブルのみが使えるので、PCケース内の空間を圧迫しません。
すっかり配線ができます。
モジュラーケーブルがすべて取り外し可能です。
必要なケーブルだけを繋げられますので、組み立てや後のアップグレードなどがしやすくなっています。
初めての自作パソコン用電源としても使いやすいでしょう。
長期保証が特徴です。
高耐久が売りの製品であることから、メーカーの10年保証がついています。
仮にパソコンの主要パーツを交換しても、電源ユニットはそのまま使えるだけのポテンシャルがあります。
信頼性も高いのが魅力でしょう。
すべてのコンデンサーに日本製の物を採用していて、内部でも特別なコンポーネントを搭載しています。
耐久力の高さはもちろん、80 PLUS GOLD認証を受けているので、安定した電力を長時間供給できるでしょう。
静音性に優れています。
低負荷の時にはファンの回転を停止させる機能である、Smart Zeroファンモードが便利です。
本体背面にオンとオフを切り替えるスイッチがあるので、静音性を求める人はオンにしてください。
フルプラグイン形式も便利な点です。
すべてのケーブルが本体に接続して利用するようになっています。
必要なケーブルのみを使えるので、ケーブル配置の利便性が高いのです。
自作パソコン用の電源としても使いやすいので、初心者にもおすすめできます。
またコスパの高さが目立ちます。
フルプラグインタイプは原則として価格が高くなる傾向がありますが、この電源は比較的に安価です。
10年保証もついていますし、日本製のコンデンサを使うなど高耐久という点でも、コストパフォマンスは良好でしょう。
コンパクトサイズながらもフルモジュラーケーブルなのが特徴です。
フルモジュラータイプとなっているので、必要なケーブルのみでマネジメントができます。
小型の自作パソコン用電源としては、かなり優秀でしょう。
ATX変換ブラケットが付属しているのもポイントです。
mini-ITX用の電源なのですが、変換ブラケットが付属していて、実際にはATX電源として取り付けができます。
互換性があるため1つの電源で、幅広い選択が取れるでしょう。
静粛性の高さが魅力的な製品です。
流体動圧軸受のファンを採用していることで、ノイズを最小限に抑えています。
さらに負荷が15%以下になると、自動的にアイドル状態になるセミファンレスモードも搭載している点が特徴でしょう。
こんな感じです!
ここまで解説してきましたが、パソコンのパーツ選びは製品の規格や仕様上のスペックを過度に気にしすぎる必要はないと思います。
理想的な電力量や目安を知っておけば、ちょっとした不具合があったときに「あれが原因かな?」と想像がつきやすくなります。
パソコンと長く付き合っていくうえで「取り返しがつかない故障」を回避するためにぜひ頭の片隅に入れておいてくださいね。