
ライブ配信で出演者にZOOMで参加してもらうための機材と接続手順を解説します
※2023年9月に更新しました。
ライブ配信の普及によって、対談やセミナーをインターネットで視聴する機会が増えています。
テレビのニュースでは、出演者がZOOMなどのミーティングアプリで参加するのも当たり前のように見かけるようになりました。
今後、完全にオフラインのイベントが復活するとしても、出演者がリモートで参加するという流れは決して変わらないでしょう。
なぜなら
✅出演者はイベント会場に向かうことなく参加できる
✅イベント主催者は出演者に交通費や宿泊費を支払わなくて済む
✅リモートでも出演者が増えるとコンテンツの魅力が高まり、視聴者にとっても嬉しい
出演者・イベント主催者・視聴者の三方良しであるため、リモート出演の便利さと楽しさを一度知ってしまった私たちはもう後戻りできなくなっているからです。
ゲストにリモート参加してもらうことでライブ映像の魅力は飛躍的に高まるため、少予算のライブ配信ではぜひ活用したいところです。
この記事では少予算のライブ配信や、プロ向けの配信機材を使っていない方でも実施できる、ZOOMによるリモート出演のライブ配信を実施するための手順と必要な機器について解説します。
ここで紹介する例はYouTubeライブでZOOMによる出演者のリモート参加、ATEM Mini(配信スイッチャー)を使用します。
他の配信機器やミーティングアプリ、ライブ配信プラットフォームでも問題なく代用できる方法です。
追加して用意する機材は出来るだけ安価(数千円)で済むようなものを紹介しているので、ぜひ参考にして環境を整えてみてください。
目次
少予算のライブ配信環境例と、ゲストのリモート参加条件について
低価格なライブ配信機器が普及したお陰で、配信スイッチャーと複数のカメラを使用した高品質なライブ配信が誰でも簡単に出来るようになってきています。
手軽に利用できる低価格の配信スイッチャーの代表格がBlackmagic Design ATEM Miniでしょう。
機器本体もコンパクトで、初心者にも分かりやすいシンプルな設計と、使いこなせばプロ並みの配信ができることからも人気がある配信スイッチャーです。

上:ATEM Miniのインターフェース 下:ATEM Mini の操作パネル
ATEM Miniは4つのHDMI入力端子と2つの音声入力端子を備え、4画面の映像を切り替えて配信することができます。

ATEM Miniのマイク入力を分割できる
ATEM Miniのマイク端子はステレオ入力に対応しており、上の画像の「Yケーブル」と呼ばれる特殊なケーブルとATEM ソフトウェアコントロール(ATEM Mini本体と併用するソフトウェア)の簡単な操作で最大4つのモノラル入力が行えます。
ソフトウェアコントロールの設定方法は「RODE Wireless GO IIをATEM Miniで使用する時の注意点」で解説しているので合わせて読んでみてください。

ガンマイクでおなじみのRODEが販売するWireless GO IIをライブ配信で利用するために購入いたしました。Wireless GO IIの長所・短所やATEM MiniとWireless GO IIの相性を検証してその結果をまとめています。...

リモート出演者なしのライブ配信
今回提案する配信環境例は、上の配線図のようにATEM Miniを使ったシンプルな配信に、ZOOMでゲストを1名追加して配信する方法となります。
2台のビデオカメラをATEM Miniに入力し、MCはパソコンにプレゼン資料を表示。その映像もHDMIで入力しています。
2つのマイク入力はメイン出演者とMCのマイクを入力しています。
出演者のPC操作は極力減らす
少予算のライブ配信では、人員や使用する機材を最小限にして日々の負担を減らすことが重要視されます。
先ほどの環境ではHDMIの入力が一つ空いているので、別のZOOMミーティング用パソコンを用意してメイン出演者の前に設置するのが手っ取り早いかもしれません。
ただ、それではライブ配信中に出演者がZOOMの操作をしなければならないので、会話に集中できなくなる恐れがあります。
そこでMCのパソコンでZOOMミーティングの準備をして、メインの出演者のパソコン操作を極力なくすようにするのが良いと考えます。
ゲストのリモート参加条件
ライブ配信は1時間です。
この間に別の会場にいるゲストをZOOMでリモート出演してもらいます。
ZOOMは2022年5月以降、無料プランのミーティング時間に40分の制限を設けています。
関連情報:Zoom ミーティングの無料版と有料版の違いは|V-CUBE × ZOOM
このため無料プランによるリモート参加は40分以内にする必要があるので、ゲスト参加の時間を長くしたい場合は有料プランに変更しなければなりません。
主なミーティングアプリの時間制限と料金を比較すると、ZOOMは無料プランの認知度は高いものの有料プランでは他社のほうが割安です。
ZOOM プロプラン | 1ライセンス 19,200円/年(税別)【最低5ライセンス契約が必要】 会議参加可能人数100名 時間制限なし 参考情報:ZOOM料金プラン |
Skype グループ ビデオ通話 | 無料プランのみ 1か月あたり100時間まで 1 日最長 10 時間、ビデオ通話ごとに最長 4 時間まで利用可能 参考情報:Skype 公正使用ポリシー |
Webex Meetings Starter(スタータープラン) | 1,700円/月(税別) 制限なし(無料プランは40分まで) 会議参加可能人数150名(無料プランは100分まで) 参考情報:Webex プランと価格 |
Microsoft Teams | 430円/月(税別) 30時間(無料プランは60分まで) 会議参加可能人数300名(無料プランは100人まで) 参考情報:Microsoft公式 Teams |
2022年10月調べ
相手の環境について
ZOOMでリモート参加するゲストの映像や音声の品質は、ゲストの周辺環境に委ねられてしまいます。
しかし事前にリハーサルし、相手の環境に合わせて配信会場側の設定を調節することで、高品質なライブ配信を実施することができます。
特にマイクとスピーカーのボリューム調節と、音周りの設定は入念にチェックしておきます。
ZOOMリモート参加の配信環境例

リモート出演者ありのライブ配信
ATEM Miniの配信にZOOMリモート参加1名の配信環境例が上の画像のようになります。
カメラ・MC用のパソコン接続は変わらず、新たに追加したものはメインの出演者とリモート参加するゲスト用のミニモニターとウェブカメラです。
それらを接続するためにHDMI分配器とHDMIケーブルやUSBケーブルも用意しています。
また、ZOOMの音声をATEM Miniのマイク端子に入力するために、オーディオ用のケーブルも追加しています。
以下で詳しく解説します。
ZOOMリモート参加の接続詳細

手前:MC用パソコン 奥:メイン出演者のZOOM用モニター
ZOOM運用で起きやすいトラブルにハウリング(エコー)があります。
ひとつの部屋で複数のパソコンを使ってZOOMミーティングを行うと、参加者の声を他のパソコンのマイクが拾ってしまいループが生じてハウリングが起きます。
このトラブルはZOOMに使うパソコンにイヤホンを取り付けることで回避できますが、ライブ配信のリモート参加中にハウリングが起きると配信管理者はかなり焦るでしょう。
そこでZOOMを使用するパソコンは1台のみとします。
MCのパソコン画面と出演者用の外付け液晶モニターを用意し、画面を拡張することでZOOMに表示するリモート参加者の顔を出演者に確認してもらうことができます。

液晶モニターはスピーカー内蔵
また、メイン出演者の映像をリモート参加者へ送信するために、MC用パソコンとウェブカメラをUSBで接続して外付け液晶モニターの上に設置します。
なお、外付け液晶モニターは必ずスピーカー内蔵かどうか確認しましょう。
安価な外付け液晶モニターはスピーカーを内蔵していないものがあります。
ここで使用する外付け液晶モニターは「山善 モバイルモニター 13.3インチ」です。
Amazonで販売しているスピーカー内蔵、13.3インチでHDMIケーブルもセットになったお買い得な製品です。
なお、スピーカーが内蔵していないとメイン出演者がヘッドホンで音声を聞かなければならなくなります。

音声分離機能付き HDMIスプリッター
MCのパソコンからZOOMの映像を外付け液晶モニターと配信スイッチャーに出力する必要があるので、HDMIスプリッター(分配器)を使います。
今回用意したHDMIスプリッターは1入力で2つに出力できる「ELEVIEW HDMI分配器」です。

ELEVIEW HDMI 分配器 スプリッター/音声分離器 画像引用元:Amazon
HDMIから音声を分離する機能を持っており、ACアダプターで電力供給して使います。
同じような製品が3~4千円ほどで販売していますので、予算に合わせて好きなものを選んでみてください。

ATEM ソフトウェアコントロールのオーディオパネル HDMIの音声が入力出来ている
ZOOMの音はHDMIでATEM Miniに入力出来ます。
ATEM ソフトウェアコントロールで確認すると、ATEM MiniのCAM3(HDMI 3)に音が入力しています。

MIC 2にZOOMの音声を入力 HDMI 3にMC用のPC画面を入力
HDMI 3の音声入力のオン/オフで運用するのも良いでしょう。
配信中に押し忘れてしまう可能性もあるので、ここではHDMIスプリッターから音声をATEM Miniへマイク入力します。

音声分離器からATEM Miniに音声を入力する際の接続例
HDMIスプリッターのアナログ音声出力からATEM Miniのマイク入力へ接続するケーブルは「RCAオーディオケーブル(3.5mmオス – 2RCAオス)」を使います。

音声分離器からATEM Miniに音声を入力する際の接続例(XLR)
他に接続するマイクがたくさんある場合は先ほど紹介したYケーブルを2本利用して最大4つのモノラル音声を入力可能です。
この場合は「RCA(オス)-XLR(オス)スプリッターケーブル」を使用してYケーブルと接続します。

MIC 2にZOOMの音声を入力 HDMI 3にMC用のPC画面を入力
このように接続することで映像はATEM Miniの操作パネルのHDMI 3スイッチ(赤枠)で切り替わり、音声はMIC 2の操作ボタン(青枠)でオン/オフとボリューム調節(▲▼)ができます。
ZOOMアプリの設定

ウェブカメラ装着のZOOM用モニター。手前のMC用PCでZOOMの準備
接続が完了したら次はZOOMの設定です。
ZOOMミーティングの入室や設定はMCのパソコンで実施します。
最終確認はライブ配信中に行うことになるので間違えないように注意しましょう。

ZOOMミーティングの参加画面
あらかじめ用意したミーティング参加用のURLから入室すると、まずはオーディオ接続の確認画面が表示されます。
入室前にスピーカーとマイクのテストを実行します。

ウェブカメラを選択する
ビデオのアイコンの↑マークを選ぶとカメラを選択できます。
ここで外付けモニターの上に装着しているウェブカメラを選びます。

マイクはウェブカメラを選択する(マイク内蔵のウェブカメラのみ)
次にマイクを選びます。
こちらもウェブカメラの内蔵マイクを選びます。(マイクを内蔵しているウェブカメラを使用してください)

スピーカーは外付け液晶モニターのスピーカーを選択
次にスピーカーです。
外付け液晶モニターのスピーカーを選んでください。
正常に外付けモニターを接続できている場合は「システムと同じ」を選べば大丈夫です。

ZOOMミーティングの画面右上の「表示」をクリック
ZOOMミーティングが無事始まると上の画像のようにリモート参加者の映像とウェブカメラの映像が並んでいるはずです。
リモート参加者の顔だけを表示する場合は右上の表示アイコンで「スピーカー」を選んでください。

通話相手(この場合会場のメインゲスト)の映像は非表示にできる
右上にピクチャーインピクチャーでウェブカメラの映像が表示されます。
この映像は非表示にすることもできます。
ピクチャーインピクチャーはATEM Miniでも表示できますので、配信管理者にとっては非表示にしておいた方が良いかもしれません。
このような感じでZOOMによるゲストのリモート参加が実現できるはずです。
ZOOMのおすすめ設定
以降ではリモート参加にZOOMを使う場合に前もって設定しておいたほうがよいポイントを解説します。
リモート参加側の設定
まずはリモート参加するゲストのZOOM設定です。

リモート参加するゲストのZOOM設定 「マイク音量を自動調節します」のチェックを外す
過去の配信でリモート参加する方の音声が割れてしまって、うまく入力できない事象がありました。
その場合、リモート参加する方の詳細設定画面で、「マイク音量を自動調節します」のチェックを外してみてください。
ATEM Miniとの相性なのかどうかわかりませんが、このチェックを外しているほうが音声がキレイに入力できます。
配信運営側の設定
次は配信(ホスト)側の設定です。

ホスト側のZOOMの設定(ZOOMログイン画面内)
ZOOMのミーティングを予約する時に、ZOOMにログインする必要があります。
この時にホスト側の設定をチェックしておきましょう。
ZOOMの「設定」を選んで、「ミーティング」を選択します。
ここでミーティングのすべての設定が行えます。

「ワンクリックで参加できるように、招待リンクにパスコードを埋め込みます」を有効
まずはセキュリティの項目で「ワンクリックで参加できるように、招待リンクにパスコードを埋め込みます」にチェックが入っているか確認しましょう。
リモート参加者がスムーズにミーティングに参加できるようにしておきます。

ホスト側でミーティング参加者の画面共有を許可
リモート参加者がプレゼン資料等を画面共有したい場合、ホスト側で画面共有ができるように設定する必要があります。
リモート側に資料がある場合は確認しておきましょう。

「参加者が自分の名前を変更することを許可」を有効にする
最後に紹介するのは任意の設定です。
ミーティングの基本設定で「参加者が自分の名前を変更することを許可」が有効になっているかどうか確認しましょう。
ZOOMは画面にミーティング参加者の名前が表示されます。
この映像はライブ配信にも流れてしまうので、リモート参加者の名前が公表していないニックネームになっているとまずいですよね。
ここで有効化しておけば配信中に気が付いても変更可能です。(なるべくリハーサル中に変更しておきましょう)

画面上で右クリック ⇒「名前の変更」
画面を右クリックすると「名前の変更」が選べます。

ライブ配信に公開可能な名前を入力
ライブ配信に公開してもよい名前に変更しておきましょう。
以上が最低限チェックしておきたいZOOMの設定項目でした。
ライブ配信で出演者にZOOMで参加してもらうための機材と接続手順 まとめ
こんな感じです!
ZOOMによるリモート参加のポイントは
✅HDMI分配器を利用してZOOMの画面を拡張する
✅なるべく1台のパソコンでZOOMミーティングに参加する
✅シンプルな配線することで気楽にリモート参加できる環境にする
✅リモート参加者とリハーサルを事前に必ず行う
以上となります。
HDMI分配器は予算をいとわなければ1入力・3~4出力可能な製品もあります。

テレビのリモート参加の様子
テレビでよく見かけるように、リモート参加するゲストを表示した大きなモニターを会場に設置するようなことも比較的簡単に出来るはずです。
リモート参加を活用して、ぜひ魅力的なライブ配信を実施してみてくださいね!