まず。NDフィルターってご存知でしょうか?
ビデオグラファーにとってはNDフィルターは撮影においてなくてはならない存在と考える方のほうが多いのではないでしょうか。
というのも業務用ビデオカメラにはほぼ100%の確率でNDフィルターは装備されています。
今、動画撮影と言えば一眼カメラで撮影するのが主流になりつつあるので、NDフィルターを搭載したビデオカメラを触ったことがないビデオグラファーさんが意外と増えているのかもしれませんね。
業務用のビデオカメラを使用してきた経験があるプロのビデオグラファーさんは一眼カメラで動画を撮影する場合に、NDフィルターが欲しくなる時があるでしょう。
NDフィルターは非常に便利な撮影アイテムです。
市場には様々な種類のNDフィルターが発売されており、どの製品が一番良いのか実に悩ましいでしょう。
このエントリーではビデオグラファーの私がNDフィルターを購入するときに悩んだことや、プロの方から頂いたアドバイスを解説します。
NDフィルターをこれから購入しようと考えている方にはきっと役に立つ情報だと思っております。
また、実際に購入したNDフィルターの製品レビューや必要なアクセサリーアイテムも同時に紹介しますので、NDフィルターの購入に悩んでいる方はぜひ読んでみてください。
NDフィルターは減光フィルターとも呼ばれており、レンズから取り入れる光の量を減らすことが出来るフィルターを指します。
一眼カメラのレンズフィルターと言えばレンズ保護フィルターをまず最初に思い浮かべるでしょう。
ほぼすべてのレンズの先端にはネジの切込みが入っており、高価なレンズを守るには保護フィルターが必須です。
この保護フィルターと同じ要領でNDフィルターは取り付けることが出来ます。
NDフィルターはレンズ保護フィルターのような透明のフィルターではなく、黒いフィルターになっています。
この黒いフィルターがサングラスのような働きをして、レンズに取り入れる光の量をある程度遮ることが出来るようになっています。
NDフィルターの減光能力には製品によって段階があり、これについてはKENKOのNDフィルターを例に挙げて解説してみます。
プロND4 | 光量を1/4にする(メーカー説明ではレンズ二絞り分の減光能力) |
プロND8 | 光量を1/8にする(メーカー説明ではレンズ三絞り分の減光能力) |
プロND16 | 光量を1/16にする(メーカー説明ではレンズ四絞り分の減光能力) |
ケンコーのNDフィルターはND4~ND16とあって、数値が高くなるほどNDフィルターの色が濃くなり、光を遮る能力が高くなります。
一般的にカメラは自然光のもとで撮影するのが最適であると考えられています。
しかし、日差しが強い場合は光量が多すぎるので、カメラの露出量を調節する必要があります。
明るすぎる撮影環境の場合、レンズを絞ってISO感度を最小値に設定します。
それでも明るすぎる場合はシャッタースピードを速くすることで白飛びするのを防ぎます。
レンズを絞りすぎるとボケ味も損なわれてしまうので、ある程度絞ったら、シャッター速度で明るさを調整することになります。
写真撮影の場合、シャッター速度を速くしてもデメリットは少ないので、NDフィルターを使うことなく露出を調整できます。
一眼カメラの撮影でプログラムオートしか使わない方も、屋外で撮影するときに白飛びすることなく撮影できるはずです。
これはカメラが自動的にシャッタースピードを速くすることで露出量を調整しているからです。
写真家さんがNDフィルターを使うタイミングは、なるべくレンズの絞りを最大開放に近い状態にしてボケ味を出して撮影したい場合やシャッター速度の上限があるときです。
そんな場合はNDフィルターが有効です。
ストロボ撮影の場合はシャッタースピードの上限があるのでNDフィルターを使います。
一方、屋外で動画撮影をする場合はNDフィルターが必要です。
ビデオカメラはシャッタースピードを固定して撮影することになります。
シャッター速度を極端に変更しながら撮影するとパラパラとしたチラツキが生じたり、映像が安定しません。
動きの少ない動画を撮影する場合はそれほど問題はないのですが、動きが速い被写体を撮る場合は不自然な動画になってしまいます。
この動画ではSONY α7Sでシャッター速度を変更して撮影した場合にどのような違いが出るのか検証してくれています。
非常にわかりやすいのでぜひ視聴してみましょう。
ちなみに蛍光灯やLEDライトのもとではシャッタースピードが速いとフリッカーが生じやすくなります。
屋外でビデオカメラによる動画撮影では露出の調整をカメラの絞りだけで行うことになるのですが、最大絞り量は限界があるので絞りすぎると画質が定価してしまいます。
そうならないように業務用のビデオカメラではNDフィルターがカメラに内蔵しており、屋外撮影ではNDフィルターを活用することになります。
HXR-NX80は小型の業務用カメラで3段階(ND1/4・1/16・1/64)のNDフィルターが用意されています。
一般的な業務用ビデオカメラは撮影中に左手で簡単にNDフィルターを入れることが出来るような位置にありますが、HXR-NX80はバッテリーのそばにあって入れにくいのが特徴的です。
すいません。水平とか全く合わせていませんが(;'∀')、三脚にカメラを乗せて屋外での撮影です。
絞りはF2.8、感度は0db、シャッタースピードはビデオカメラなので1/60固定です。
上の写真左はNDフィルター無しの状態ですが、液晶モニターに表示される映像は白飛びしていて情報がほとんどありません。
写真右はNDフィルターを入れました。 ND1/32です。正常な露出範囲内の映像が映し出されています。
NDフィルターを入れることでレンズの絞りは最大開放でも適切な露出で撮影することが出来ます。
残念ながら現時点(2023年7月)ではBMPCC 6K Proのような特殊なシネマカメラを除いて、一眼カメラのボディ本体にNDフィルターを搭載した製品は販売されていません。
そのため当面の間は一眼カメラでNDフィルターを使用したいなら、レンズの先端にNDフィルターを装着することになりそうです。
減光量が異なるNDフィルターを数枚購入して、撮影時にはすべてのNDフィルターを持ち運ぶ必要があります。
また撮影時には日差しの強さに合わせてNDフィルターを何度も取り換えることになります。
低予算で行う映像制作ではカメラマン一人でこれらを行わねばならないので負担は大きいです。
また、突発的に撮影シーンが発生するドキュメンタリー映像やブライダル映像の制作においては、NDフィルターを付け替えるヒマがないのが現実です。
NDフィルターは1枚4~5千円程度で販売していますが、濃度が異なるNDフィルターをまとめて購入するとなるとかなり高い買い物になってしまう点も否めません。
ワンマン撮影を取り組む方にオススメのNDフィルターが可変NDフィルターです。
可変NDフィルターはバリアブルNDフィルターとも呼ばれておりまして、NDフィルターの減光量を変えることが出来る製品です。
一見すると普通のNDフィルターと何ら変わりがないようにも見えますが、実はフィルターが回転するようになっていて、フィルターの濃度が変わります。
つまり1枚のNDフィルターで光量を調節できるという優れた性能を持っているのです。
「バリアブルNDフィルター」または「可変NDフィルター」でググってみると結構色々なメーカーから発売しています。
中でも評判が良さそうな製品がKenko、MARUMI、TiffenのバリアブルNDフィルターです。
可変NDフィルターの良いところは1枚購入すれば、減光能力が異なるNDフィルターを複数購入するのと同じ効果を得ることが出来るという点と、取り換えの手間がないことです。
可変NDフィルターなら撮影場所の環境であれこれ悩む心配もありません。
NDフィルターを何枚も持ち運ぶ手間もないので、一人で撮影に臨むビデオグラファーにとって非常に助かるアイテムです。
ただし、デメリットがないわけではありません。
バリアブルNDフィルターはレンズフィルターの価格として考えると結構お高めです。
Kenkoの可変NDフィルターは4万円ほどするのでちょっと安いレンズが1本変えてしまうぐらいのお値段です。
また、安い可変NDフィルターについては色ムラが生じることもあるようです。
高価なフィルターであっても経年劣化でも色ムラや剥げ落ちが起こります。
レンズは資産であると言われることもありますが、NDフィルターはレンズほど長持ちはしないでしょう。
私が可変NDフィルターを購入した理由は、屋外で絞りを開放で撮影したいこと。そして何度もフィルターを取り換えるヒマもないこと。
そしてプロのビデオグラファーさんのセミナーに参加した際にNDフィルターを奨めておられる方が多かったということがあります。
ただ、やっぱり高い出費となるので4万円以上するKenkoの可変NDフィルターはちょっと高いなーと思いました。
値段が一番高いのでやっぱり品質は良さそうですけどね。
Kenko、MARUMI、Tiffenの3社のNDフィルターについてはYouTubeでググってみるとテスト動画がたくさんヒットするので、映りにこだわりがある方は購入する前に必ずチェックすることをお勧めします。
私はYouTubeの検証動画をチェックしつつ、プロのビデオグラファーさんもオススメのTiffenを選びました。
Tiffenはアメリカのメーカーで、YouTubeでググれば検証動画もたくさん見つけることができますよ。
可変NDフィルターをいざ購入するとなったら、どのサイズにするか迷うかもしれません。
簡単に考えると、自分が一番使う機会が多いレンズのレンズ径に合わせて購入するのが良いと考えられますが、現時点でレンズ資産が少ない方や定番レンズを決めかねる方もおられるでしょう。
そんな方はなるべく大きなレンズ径の可変NDフィルターを購入するのが良いと思います。
私の場合を例に挙げてみましょう。
私はSONY Eマウントレンズに合わせるための可変NDフィルター購入を検討しました。
現時点ではレンズ径72mmのAPS-Cセンサー用レンズ18-105mmに合わせて使うことになります。
しかし将来的にフルサイズ用レンズ FE 24-70mm F2.8 GM(レンズ径82mm)を購入するようなことがあれば、72mmの可変NDフィルターを取り付けることが出来なくなります。
そのようなことにならないよう私はTiffenの可変NDフィルターで最大サイズの82mmを購入し、E PZ 18-105mm F4 G OSSにはひとまずステップアップリングで装着することにしましたよ。
Tiffenの可変NDフィルターを注文。早速届きましたよ。
これに合わせてステップアップリングも購入しました。
Amazonでは人気が高いXCSOURCEのステップアップリングとステップダウンリングのセットです。
それぞれ8種類、合計16個のリングが2,000円以下で購入できるようになっています。(2018年5月時点)
それでは早速18-105に82mmのTiffen 可変NDフィルターを取り付けてみましょう。
1個のリングの厚さはネジ部分抜きでおよそ4mmほどになります。このリングを重ねてつけることで直径が異なるレンズフィルターを取り付けることが出来るようになります。
こちらが82mmのTiffen NDフィルターに77-82mmのステップアップリングを取り付けてみた状態です。
E PZ 18-105mm F4 G OSSは72mmのレンズ径なので、これにさらにもう一つステップアップリング72-77mmを取り付ける必要があります。
レンズからNDフィルターまでの距離がかなり長くなってしまいましたが、ケラレは発生していません。
ただ、これ以上小さいレンズに取り付ける場合はケラレが発生する可能性があります。
特に広角レンズにステップアップリングを合わせる場合は要注意ですね。
以上をざっくりまとめてアドバイスしますね。
✅屋外での動画撮影でパラツキもなくボケ味を効かした動画を安定して撮るにはNDフィルターが便利
✅シナリオや打ち合わせがない、瞬間的な撮り高を上げる必要がある撮影には可変NDフィルターのほうが有利
✅可変NDフィルターは結構高価だけど、NDフィルターを何枚も購入する費用や、撮影時に交換する手間を考えると選ぶ価値は十分
✅NDフィルターを購入するならサイズ大き目で購入し、ステップアップリングで取り付けるとお得
✅ステップアップリングはケラレの発生に注意する
こんな感じです。
一眼カメラの感度耐性はかなり良くなってきているので、例えば屋外の撮影は濃度の濃いNDフィルター一枚だけで対応し、暗すぎるなら感度を上げれば良いって考え方のフォトグラファーさん・ビデオグラファーさんもおられますね。
私の場合、結局納得のいくNDフィルターにたどり着くまでに2枚、3枚買い足すなら可変NDフィルターが良いかなーと思い、購入を決めました。
TiffenのNDフィルターについては別記事でもう少し詳しくレビューしますので合わせて読んでみてくださいね。
以上。「動画撮影用にNDフィルターを買う方に私がアドバイスしたいコト」でした。