ソニーから4Kが撮れる小型ハンディカメラ「PXW-Z90」「HXR-NX80」が2017年12月18日に発売されました。
この二台はPXW-X70の後継モデルとなっていますが、PXW-X70の販売もしばらくの間続くようです。
PXW-Z90はXDCAMに属し、HXR-NX80はNXCAMに属します。
XDCAM、NXCAMはともにSONYの業務用カメラではありますが、XDCAMはその中でも上級者用、NXCAMは業務用エントリーモデルとして認識されています。
PXW-Z90とHXR-NX80はイメージセンサーや画像処理エンジンは共通しており、使い勝手はほとんど同じです。
価格差は5~6万円ほどの開きがありますので、購入を検討している方はどちらにするべきか迷うところでしょう。
ちなみに私はNXCAMであるHXR-NX80を購入しました。
ここではHXR-NX80の使い勝手や操作性、HXR-NX80の良い点・悪い点を解説していきます。
テスト映像もお見せしていますので、PXW-Z90またはHXR-NX80を買う予定の方はぜひお読みください。
私がHXR-NX80を購入した第一の理由は、「サブカメラが欲しい!でも中途半端な性能は嫌。民生用ハンディカムのような携帯性で画作りもそれなりにできるマシンが理想。」でした。
数年前からほしいカメラのイメージは明確にあったので、PXW-X70はもちろんCanonのXF100、XF400、XF405も検討しておりました。
お仕事ではメインカメラとしてSONY NX5系やPXW-X160、PXW-Z150を使用しておりますが、予備のカメラって結局必要です。
では同じカメラを予備カメラにするのはどうか?ってなると、それはそれで持ち運びに問題があるんですよね。
予算が潤沢な制作ばかりではありませんから、できれば持ち運びやすい小型の業務用カメラを併用したいところです。
PXW-Z90とHXR-NX80は最高100Mbpsの4K動画も撮影でき、Logによる撮影も可能です。
画質については申し分なく、カラーグレーディングで編集時に色を作りこんでいくような映像も撮影できます。
この動画はHXR-NX80のサンプル動画です。4Kで撮影されているのでぜひ視聴してみましょう。
PXW-Z90とHXR-NX80の違いは4:2:2 10bitで撮影できるかどうかの違いで、PXW-Z90は10bitの色深度で撮影が可能です。
一方のHXR-NX80は4:2:0 8bitのみとなっています。
ポスプロでカラーグレーディングを重視するような映像制作の場合、4:2:2 10bitの映像が必須となるでしょうからPXW-Z90を選ぶべきでしょう。
ただ、私の場合カラーグレーディングを積極的に使うような制作をそれほどやっていない上に、4:2:2 10bitで撮影した映像はファイルサイズが膨大になるので保存・管理が大変です。
画質については4K 8bitで撮れるHXR-NX80で十分かな。という判断でHXR-NX80を選びました。
それでも4KやXAVC-S HDで撮るとファイルサイズはかなり大きいですよ。
では次にHXR-NX80を実際に使ってみることによってわかってきた、良い点悪い点を指摘してみましょう。
小型のビデオカメラとは言え、税込価格で28万ぐらいする以上それなりの使い心地を期待してしまいます。
製品を実際に操作してはじめて気が付いた、HXR-NX80のここはちょっとビミョー...と思う部分を挙げてみます。
私個人の感想なので、人によっては全然問題ないよってこともあると思いますよ。
HXR-NX80は付属しているハンドルを装着して2チャンネルの録音ができるようになっています。
カメラにも内蔵マイクがあるので、ハンドルを取り付けなくても音声は収録できるようになっています。
例えば一般的な業務用カメラにはハンドルの先端がマイクになっており、ハンドルに取り付けるガンマイクと内蔵マイク両方で収録できるようになっています。
ところがHXR-NX80ではガンマイクで収録するように設定すると、内蔵マイクは機能しないような仕組みになっています。
これはもしHXR-NX80をメイン機として一台でオペレーションする場合は意外と困る点かもしれません。
たとえばガンマイクにノイズが入っている場合、内蔵マイクで収録した音を生かすなんてことができないのですよ。
あくまでもサブ機としてHXR-NX80を使用する場合は、メイン機で収録した音声があるので問題はないと思います。
例えば、一眼カメラと一緒に使う場合はHXR-NX80の音声が頼りになるでしょうから、撮影前にはガンマイクの調子や撮影環境をよく調べておかなければなりません。
HXR-NX80は一つのマニュアルダイヤルとRECボタンの右側に搭載されている上下左右のカーソルボタンでメニュー操作を行います。
ホワイトバランスボタンにはホワイトバランスを選択できる機能が割り当てられています。
このボタンはA、B、PRESETのどれかに切り替えることができます。
一般的な業務用カメラだと、適正なホワイトバランスを設定するにはAもしくはBに割り当てて、適当な白い紙や壁にを向けてセットボタンを押せば良いのですが、HXR-NX80にはセットボタンがありません。
メニューから実行するか、カスタムキーにセットボタンを割り当てるしかありません。
たとえばASSIGNボタン登録でASSIGN1に「WB SET」を割り当てると、「WHITE BALANCE」でAかBを選択してWB SETボタンを押すとホワイトバランスを変更できます。
ASSIGNボタンの数には限りがあるので(最大6つ)ホワイトバランスのセットボタンとして一つ潰すのはやっぱりもったいないと思います。
買う前から分かっていましたが、ズームリングとフォーカスリングが兼用っていうのはやっぱり操作がしにくいなあと思います。
私の場合はズーム操作はハンドルと本体に備わっているズームレバーを使用して、レンズ側の操作リングはフォーカス操作中心で使っています。
でもこれはCanon XF405/XF400も同じ構造になっているので仕方がないと思えるところです。
SONY PXW-X160を初めて使ったときにも感じたことですが、SONY XDCAMは刷新されるたびに機能がてんこもりになっているせいかバッテリーの持ちが悪くなっています。
HXR-NX80には大小二つのバッテリーが付属していますが、撮影が長時間に及ぶ場合2個だけだと厳しいかもしれません。
上がバッテリー大、下がバッテリー小です。
バッテリーをフル充電したときのモニター表示です。
100%となっております。
業務用カメラは%表示ではなく、撮影可能時間が表示されるものが多くてそのほうが使い勝手が良いです。
%表示ではあとどのぐらい撮影できるのか読むことができずちょっと不安です。
これは一眼カメラと同じ仕様なので、一眼カメラに慣れている方は何とも思わないかもしれませんが、ビデオカメラマンにとっては非常に残念に感じる部分ではないでしょうか?
それに減るのが結構早い気がします。
お値段はしますが、予備バッテリーがあると便利ですね。
ここまでHXR-NX80の良くないところを解説してきましたので、もしかして欲しくなくなってしまったかもしれませんが(苦笑)
購入した感想は「買ってよかった」と思っています。ではHXR-NX80の良いトコロを挙げていきますね。
やっぱり一番気に入った点は画質の良さです。
4Kで撮影するときのシャープさとか本当に感動しますね。
サイズが小さいので、不安に思われるクライアントもいるのかも知れませんが、完パケを渡したときに画質の良さで喜ばれることが多いですね。
XAVC-Sで撮影するとmp4ファイルになるのですが、AVCHDのMTSファイルよりも再生しやすく取り扱いやすい点も魅力です。
特にMacでも変換することなく使えるのはありがたいのではないでしょうか。
HXR-NX80は一見ハンディカムと同じサイズですが、やっぱりSONY業務用カメラシリーズのひとつです。
高級感があって、十分に所有欲を満たしてくれますよ。
やっぱりハンドルユニットが装着されると違いますね!
組み立てた時はなんだか感動しちゃいましたよ。
この動画はハンドルユニットの装着を動画で撮影したものです。短い動画なので、よかったら視聴してみてください。
前モデルのPXW-X70と圧倒的に違う点がオートフォーカス性能です。
4K解像度までになるとマニュアルでのピント合わせが大変で、液晶モニターでは完璧に合わせるのがとても難しいです。
PXW-X70ではコントラストオートフォーカスで、動きものの撮影ではどうしてもピントが追い付かない感じがありますが、HXR-NX80になって段違いにAF精度が向上しています。
HXR-NX80にはコントラストAFと位相差AFを兼ね備えた像面位相差AF(ファストハイブリッドAF)となっていて、測距点は273点となっています。
SONY α6500やα6300の425点像面位相差AFセンサーにはかなわないものの、179点の測距点であるα6000よりも優れたAF機能です。
α6000でもフォーカス合わせのスピードはミラーレス一眼の中でもかなり速いほうです。
被写界深度はHXR-NX80のほうが深いので、これで十分な性能となっていますよ。
4K撮影の場合でもカメラのオートフォーカスに完全に任せることができるほどですよ。
暗所での撮影ではゲインを上げますが、高感度設定時でもノイズがほとんど気にならなくなっています。
感度耐性は新型のカメラになるほど向上しますし、すでに発売して数年経つPXW-Z150でも十分なぐらいでした。
NX80はそれよりもさらに向上した感じがありますね。
レンズの絞りは最小F2.8とそこまで明るいほうではありませんが、感度を上げてもノイズが乗らないので結構安心してゲインを上げることができますよ。
SONYのNXCAMにはピクチャープロファイルが搭載していて、映像の発色や階調を調整することができるのはご存知の通り。
このサイズのビデオカメラでS-Log撮影できるのはちょっと感動かも。
例えばα6500と併用して使うことで、ボケ感を重視したいイメージカットはα6500に任せ、音声をしっかり撮りたいインタビューのカットをHXR-NX80で撮るとします。
ピクチャープロファイル設定を合わせることで編集の整合性も担保されますのでクオリティは断然高まりますよ。
絵作りはビデオカメラよりも一眼カメラのほうが優れていますが、一眼カメラの音声収録はちょっと難があります。
SONYにはマルチインターフェースシューで取り付けられるXLR-K2Mがありますが、音声収録ならやっぱりビデオカメラに軍配が上がるでしょう。
複数のカメラでワンマンオペレーションするハイブリッドなビデオグラファーにはS-Log撮影ができるHXR-NX80は重宝するでしょう。
960fpsは1秒間に960フレームの映像を撮影するっていう意味です。
これヤバくないですか(汗)
α6500の120fpsスロー&クイックモーション撮影機能を初めて使った時も「スゲー!」って思たのですが、その8倍ですからね。
実際に撮ってみました。
これまでスローモーションと言うと、普通に撮影したクリップを編集で再生速度の変更を適用してスローモーション動画にしていました。
しかし、この方法だと強くスローモーションを適用した場合カクカクした映像になります。
例えば120fpsスローで撮影し、標準的な30fps(29.97fps)のタイムラインに乗せると1/4の速度のスローモーションになる上、非常に滑らかな動きをするのが特徴です。
1秒間に120枚の画像を撮影することになるので、ファイルサイズはかなり大きくなりますが、映像表現の幅はかなり広がりますよ。
ちなみに4K撮影ではスーパースローモーション撮影が出来ません。(30fpsまで)
では最後にHXR-NX80と合わせて購入したいアイテムを紹介しましょう。
ここではNX80と合わせて購入すると便利なアイテムを紹介します。
すべて私が実際に使っているアイテムです。
この記事を作成した時点で、もうすでにHXR-NX80を使って何度か撮影を行っております。
また、今後の撮影でもNX80を活用していく上で、私が欲しいと思っているものも紹介します。
過去の記事「SONY HXR-NX80を買いましたよ。ビデオカメラレビュー」でも書きました通り、SONY HXR-NX80にはガンマイクが別売りになっています。
ゼンハイザーの指向性マイクも評判が良いので気になりましたが、私はSONY純正にしましたよ。
結構感度良くてクリアな音声が収録できますよ!
また、バッテリーチャージャーも別売りになっているので、HXR-NX80の購入と同時に用意するべきでしょう。
私の場合、ビデキンドットコムで購入したときに、購入特典としてチャージャーセットが付属してきました。
この2アイテムは必須と言えます。
HXR-NX80を長く愛用したいので、本体やレンズを保護するアイテムも合わせて購入したいところです。
私はレンズ保護フィルターを取り付ける派です。KENKOのLotusプロテクターがおススメです。
KenkoのレンズフィルターでPRO1Dシリーズを使ったことがある方は多いのではないでしょうか?
私はその中でも撥水・撥油コーティングが施されたLotusプロテクターを今回購入しました。
見た目はこれまでの製品とあまり変わりませんが、いざレンズ保護フィルターに汚れがついたときに威力を発揮します。
汚れが取れやすく、指紋も付きにくい感じです。
レンズ保護フィルターは拭くときについつい指紋が付いてしまうのですが、Lotusフィルターは指紋が付きにくい仕様となっていますよ。
NX80のレンズ直径は62mmです。なのでレンズ保護フィルターは62mmを用意しましょう。
NX80にはレンズフードとは別にレンズカバーがあります。
レンズ保護フィルターを装着した上にレンズカバーを装着することが可能です。
交換レンズがクソ高いフルサイズの一眼カメラユーザーさんなら、レンズ保護フィルターはつけて当然だと考えますよね。
たまに「レンズ保護フィルターを付けると解像度が落ちるからイヤ」っていう勇者もいますが、私はレンズ保護フィルターで画質が落ちることに気が付かないし、それよりもレンズのほうが大事なのでやっぱり必要不可欠なアイテムです。
液晶モニターもキズから守りたいですよね。
NX80はタッチパネル式になっており、オートフォーカス時にフォーカスポイントを指で指定するだけでピントが合います。
こんな便利な機能を使わない手はありません。
そこで気になるのが液晶モニターの汚れ・キズです。
タッチパネルをベタベタ手で触ると汚れるし、下手したらキズを付けかねません。
また、タッチパネル式液晶の場合は感度が落ちないようにメーカー純正の保護フィルムを購入するのがセオリーです。
しかしHXR-NX80にはメーカー純正の保護フィルムが見当たりません。(2018年1月時点)
なので少々不安ですが、社外品で代用することにしました。
今時液晶保護フィルムは百円ショップでも販売していますが、私は和湘堂のSONY デジタル4K AX100用3.5インチ ビデオカメラ液晶保護フィルムを購入しましたよ。
NX80と同じサイズなので大丈夫かな?
和湘堂のSONY ビデオカメラ液晶保護フィルムにはフィルムのほかにクロスも付属しています。
まずはクロスでホコリを取り除きます。そしてブロアーを吹き付けつつ、ホコリをシャットアウトします。
多少気泡やホコリが入ってしまいましたが、まあいいでしょう。
あると便利なのがクイックシューセットです。
カメラ一台でオペレーションする場合はそんなに必要性を感じることがありませんが、例えば一眼カメラと2台で撮影に臨むときに非常に便利です。
ビデオ用三脚を持参する場合、カメラを乗せ換えたくなることがあります。
クイックシューセットを統一して装着しておけば、カメラの取り換えもスムーズです。
撮影時は何かとバタバタしてしまいますが、撮影アイテム一つ用意するだけでスムーズに余裕を持って撮影に臨めますよ。
私はVelbonのレバー式クイックシューセット 「QRA-635LII」を気に入って使っています。
見た目以上に頑丈で、カメラとクイックリリースプレートが緩むこともありません。
また、クイックリリースプレートとシューベースそれぞれ単品で購入できるのも魅力の一つです。
万が一紛失した時も安心ですね。
こんな感じ!
HXR-NX80は業務用カメラエントリーモデルとは思えないほどに画質が良く、特に4K映像が魅力的です。
そして機動性に優れ、ある程度マニュアルで設定して撮影したい方はもちろん、フルオートでの撮影も簡単に切り替えることができるのも強みです。
使い方次第でメインカメラとしても大活躍しそうなカメラですよ。HXR-NX80おススメです。