18Mar

※2020年3月に更新しました。
早速カラーグレーディングの作業に移りたいところですが、まずカラーグレーディングに適した撮影素材を用意する必要があります。
予算が潤沢なプロダクションで利用されるREDやARRIのAlexaのようなシネマカメラではカラーグレーディングに最適な映像を撮影することができます。
しかし個人ユーザー向けのカメラを利用する場合はそのほとんどがカラーグレーディングに適した撮影を行うことができません。
このエントリーでは予算が少ないプロダクション向けにカラーグレーディングに適した撮影ができるカメラや方法を解説しようと思います。
目次
DSLRではカラーグレーディングできないって本当?
一眼レフカメラのムービーの多くはH.264ベースのビデオ方式で記録します。
カラーグレーディングに最適なビデオ形式はRAWであり、次いでMXFやQuickTimeムービーになります。
おすすめ記事:知らないとクビになる?カラーグレーディングと撮影の常識
H.264はこれらのビデオ形式よりも圧縮率が高くなり、ほとんどの場合4:2:0でカラーサンプリングされます。
さらに詳しく解説しましょう。ココ重要です。
シネマカメラが出力する映像は4:4:4でカラーサンプリングされます。
カラーサンプリング
RGB画像を使用する場合、3つのカラー成分を保存するのに、同じビット数を使用します。しかし、YCrCbビデオを使用する場合は、前述した人の知覚の特異性を利用しています。つまり、人の目は、色に対してよりも画像の輝度の変化に対するほうが感度が高いのです。この特性を生かし、放送品質のビデオは、各YCrCb成分に対して同じ量の情報を保存するのではなく、輝度情報を保存する場合の半分の量のカラー情報のみを保存します。これは4:2:2カラーとも呼ばれています。輝度の値の4つのサンプルそれぞれに対し、各カラー信号の2つのサンプルのみがあるという意味です。これにより、伝送中の帯域幅を節約できると同時に、ストレージも節約することができます。
Adobeデジタルビデオ入門から引用しています
4:4:4とは100%の色情報を持っていることを指します。
つまりシネマカメラの映像は100%の色情報があり、カラーグレーディングで露出補正を行ったときほぼ無劣化で調整することができます。
後で色合わせしやすい映像になっているんですよ。
しかしこの4:4:4で記録されたデータは容量が大きく扱いにくいものになります。
そのため放送用の映像は 4:4:4から見た目には分からない程度に色情報を破棄し、データを圧縮します。これが4:2:2 サンプリングメディアとされています。
ProRes 422やDNxHDは4:2:2でカラーサンプリングされる形式です。
4:2:2のメディアでも十分にカラーグレーディング可能です。ノイズをほとんど発生させることなくコントラスト調整をすることが可能です。
しかし、個人向けのDSLR(一眼カメラ)では4:2:2からさらに色情報を削減した4:2:0のデータ形式で出力します。
RAW(シネマカメラの出力方式) | 4:4:4 |
ProRes 422,DNxHD,XAVC(放送用機器の出力方式) | 4:2:2 |
H.264(一眼カメラの出力方式) | 4:2:0 |
4:4:4と比較すると4:2:0は4分の3の色情報を破棄しているのですが、見てもほとんど違いが分かりません。
データ量も小さいので小予算のプロダクションでは最適なメディアになります。
しかし、多くのカラー情報が破棄されているのでカラーグレーディングの際のコントラスト調整ではノイズが発生します。
4:2:0でカラーサンプリングされたデータはグリーンスクリーン合成などいろんなビジュアルエフェクトに不向きとなります。
H.264メディアをカラーグレーディングするときの最善策
H.264の映像に対して過度にカラーグレーディングを行いたい場合、4:4:4や4:2:2のサンプリング形式にトランスコード(ファイル変換)してから作業を行えば効果的なのでしょうか?
結論から先に言うとその作業は意味がありません。
カラーグレーディング前のメディアを他の形式に変換しても失われた色データが回復するわけではありませんので画質の向上にはつながりません。
録画時の圧縮によって失われた色データは永遠に失われたままとなります。
しかし、カラーグレーディングの作業を行った後、たとえ元のソースメディアが高圧縮の8ビット形式であったとしても、最終的なレンダリングは10ビットや12ビットの形式にレンダリングすることでソフトウェアの高品質な画像処理を維持できるので、各グレーディングソフトもそうするように推奨しています。
カラーグレーディングに最適な一眼レフカメラ人気ランキングTOP5
2020年3月時点でカラーグレーディングに対応する一眼レフカメラを紹介します。
ここで紹介するカメラは業務用カメラを除き、あくまでも個人ユーザーが手に入れることができる製品に限定してみました。
Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K
通称BMPCC 4Kはカラーグレーディングに最適なRAWで動画を撮れる一眼カメラです。
マイクロフォーサーズセンサーでパナソニックGHシリーズ・オリンパスのM.zuikoレンズが使えます。
2018年に発売されてからビデオグラファーに人気で、このカメラが出たことでRAWのカラーグレーディングが一気にハードル下がりました。
13ストップのダイナミックレンジで録画ができます。
BMPCC 4Kで出力できるBlackmagic RAWは通常のRAWデータよりも扱いやすく普通の動画ファイル(一個のクリップ)として扱えます。
このカメラを一般ユーザー向けの一眼カメラとして扱ってよいのか迷いましたが、低価格なカラーグレーディング向けのカメラとしてイチオシなのは間違いありません。
6Kで撮影できるBMPCC 6Kもあり、こちらはAPS-CセンサーのEF(Canon)マウントカメラです。
キヤノンユーザーはBMPCC 6Kがオススメです。
Panasonic LUMIX GH5S
パナソニックのフラッグシップモデル LUMIX GH5Sもカラーグレーディングに対応できます。
カラーグレーディングに適したLog撮影機能を標準で搭載しております。
GH5Sのプロフェッショナル動画性能|Panasonic公式
人気のあるGH5はLog撮影機能が有償オプションになっているので、カラーグレーディングの制作が想定されるならGH5Sがオススメ。
ただしRAWデータよりも圧縮率が高いので、撮影時の露出設定によっては色が破綻するので慣れが必要。
それでも4:2:2で収録できる貴重なカメラですよ。
Canon EOS R
Canonのフルサイズミラーレス一眼カメラの上位モデル EOS RもCanon Logというカラーグレーディングに最適な映像を撮ることができます。
4K解像度で4:2:0 8bitの動画データを出力することができ、HDMIの外部レコーダー(NINJA Vなど)を使うことで4:2:2、10bitで出力できます。
カラーグレーディングに最適な収録ができることで動画クリエイターにも人気のカメラです。
Canonのシネマカメラ C200と併用することで機動力のあるプロフェッショナルな撮影が実現できますね。
SONY α6600
動画に強い一眼カメラと言えばSONYが考えられますね。
ソニーの動画向け一眼カメラと言えばα7Ⅲと言われていますが、ボクはα6000シリーズの方が撮影しやすいと思っています。
動画撮影時に液晶モニターも画面いっぱいに表示される上にα6000シリーズの方が安いです。
α6000シリーズは現在のところα6600が最上位機種です。
ちなみにカラーグレーディング用の動画はS-Logに設定します。
出力されるファイルはXAVC-S(MP4)で圧縮率高めの設定しかないのがちょっと残念なところ。
Nikon Z5
Canonのオススメカメラを紹介したのなら、Nikonも外すことができませんよね。
ニコンはミラーレス機のZ5からLog撮影(N-Log)が出来るようになりました。
ダイナミックレンジが広く、HDMI出力時には12段の10bit動画が記録できます。
ファームウェアの有償アップデートを使えばHDMI記録でRAW出力にも対応できるようになったのもさすがニコンといったところでしょうか。
Nikon ミラーレス一眼カメラ Z6 Z 6 24-70 レンズキット
カラーグレーディングに対応する個人向け一眼カメラ5選 まとめ
ここで挙げた一眼カメラは価格的には業務用カメラと言っても遜色ない製品が含まれています。
予算が少ないプロダクションや、そもそもそこまで高価な一眼カメラの購入を考えていなかった映像クリエイターにとって、カラーグレーディングに対応するカメラ選びは悩ましい選択とも言えるでしょう。
そもそもカラーグレーディングは映画のプロダクションで実施される作業であり、一眼カメラ初心者が興味を持つものではないはずです。
たとえこれからカラーグレーディングをチャレンジしようと思ったばかりであったとしても、自分自身が「中級~上級クリエイターである」と自負しつつ、この機会に思いきって対応するカメラを手に入れてみるのも良いのではないでしょうか。
カメラの進化は日進月歩で次々に新商品が生まれます。
カラーグレーディング対応カメラの紹介はこれからも更新していこうと思います。
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