22Nov
カラーグレーディングの基本的な作業工程を教えるよ!ではLogで撮影した動画にまずはLUTをあててカラーグレーディングをする工程を解説しましたので、まずは実際に手持ちのカメラでLog撮影を行います。
log撮影できるカメラは様々あります。
撮影前に取扱説明書をよく読んでlog撮影にとりかかってほしいのですが、この時に気をつけなければいけないことがカメラの出力設定です。
カメラが出力するファイルはMTS、MOV、MP4(h.264)と様々ありますが、カラーグレーディングに適したデータ形式と適さないデータ形式があります。
目次
知らないとクビになる?カラーグレーディングと撮影の常識
撮影者の立場で考えた場合、撮影の際にどんなカメラ・どんなレンズで撮影したか?を重要視したいところですが、カラリスト(カラーグレーディング担当者)にとってはカメラ機材の選択は重要視されておらず、それよりもどんなデータ形式で記録されたか?のほうが重要です。
予算が豊富なプロダクションの場合、カラーグレーディングを前提とした撮影に使用されるカメラは主にREDやARRIが利用されます。
画像はRED デジタルシネマカメラです。
これらのカメラはRAW形式で出力することができます。
RAWデータは写真家にとって馴染みのあるデータ形式でしょう。
RAWデータは圧縮率が低く、色補正やカラーグレーディングに最適なデータ形式です。
しかし、ファイルサイズが巨大でRAWデータ編集に相応する編集機材(ハイエンドPC及び周辺機器)を用意できるプロダクションでなければ到底扱うことができません。
そのためQuickTimeやMXFのような圧縮したデータ形式で記録することになります。
例えば業務用のシネマカメラとして手が届きやすいSONY PXW-FS5ⅡではSDI端子からのRAW出力にも対応するようになりましたが、外部レコーダーを要し、SDカードにRAWデータを記録できません。
参考:PXW-FS5のlog撮影の設定方法とlog撮影素材を配布します
PXW-FS5が出力できるデータ形式はMXF、MTS、MP4となっています。
出典:PXW-FS5 仕様書
このような記録フォーマットを持つカメラの場合、カラーグレーディングを行う撮影はなるべく圧縮率の低いデータ形式を選択する必要があります。
SONY PXW-FS5では現在のところMXFで出力することが推奨されます。
RAWデータのメリット
一般的にカメラで撮影するときに感度の調整(ISOと絞り)と色の調整(ホワイトバランス・ブラックバランス)を行いますが、RAWデータはカメラの設定による影響は受けません。
RAWデータはカラーグレーディングの設定で露出や色をすべて変更することができます。
RAWデータのデメリット
RAWデータは直接編集をすることが困難なデータ形式です。
そのため、撮影後にグレーディングを行った後、動画編集を行うことができるようにデータ変換する作業が生まれます。
RAWデータを保存するバックアップスペースの確保とデータ変換で生じる時間などを考えると、高いノウハウと予算をもったプロダクションでなければ扱うことが困難と言えます。
QuickTimeとMXFってどんなファイル?
ほとんどのシネマカメラはQuickTime(MOV)またはMXFで出力することができます。
この二つのデータ形式はRAWよりも圧縮率が高いのですが、編集作業も行うことができるので限られた予算の制作ではRAWよりも一般的に使用されるデータ形式です。
RAWデータのように編集でデータ変換する必要もなく、ファイルサイズも小さいので負担が大幅に減ることになります。
PremiereProCCやDaVinci Resolve、EDIUS8ではMXFを読み込んで編集することができます。
- PremiereProCCで編集する場合、カラーモードでカラーグレーディングを行います。
- DaVinci Resolveはカラーグレーディングのアプリケーションではありますが、一般的な編集作業はできるようになっています。
- EDIUS8は動画編集メインのアプリケーションの中におまけ程度にカラーグレーディングができるようになっています。
一眼カメラでカラーグレーディングしたいときはどうするの?
シネマカメラと同等のイメージセンサーを持つ一眼カメラでカラーグレーディングを前提とした撮影を行う場合にオススメのデータ形式はMOVです。
MXFで出力できる一眼カメラは私の記憶ではなかったと思います。なのでQuickTime(MOV)一択になります。
カラリストを怒らせるカメラの設定とは?
QuicktimeやMXFで記録するときにLogエンコードメディアとRec.709(レック709と読む)のどちらかを選択します。
カラーグレーディングを前提とした撮影の場合、もしカメラマンがRec.709を選択して撮影するとカラリストからひんしゅくを買います。
カラーグレーディングの参考書 カラーコレクションハンドブックではカメラマンが独断でRec.709を選択した場合は解雇されると記載されているほど大きなミスです。
眠い色のLogエンコードメディア
logエンコードメディアで撮影した映像はくすんだ色(眠い色と呼ばれています)で、そのまま編集することはできません。
しかし、logエンコードメディアは調整できるラチチュードが最大限保持されるように記録しますので、カラーグレーディングに最適の映像となります。
普通のビデオと変わらないRec.709
これに対してRec.709で撮影した映像は普通のビデオと変わらない色です。
Rec.709で撮影した映像は調整可能なラチチュードがかなり削減されていて、もしRec.709のクリップに過度な露出補正や色補正をしようものなら画質がかなり劣化します。
PXW-FS5のピクチャープロファイルで言うところのPP7~PP9以外の設定を指します。
h.264 もカラーグレーディングに適していないけど…
DSLR(一眼)やアクションカメラではH.264メディアで記録するものが多く、H.264メディアはカラーグレーディングに向いていないです。
この理由については「カラーグレーディングに対応する個人向け一眼カメラ5選」で解説しますのでぜひお読みください。
一眼やアクションカムの映像でカラーコレクション・カラーグレーディングをする場合はなるべくH.264以外の記録形式をオススメします。
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